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横浜地方裁判所 昭和46年(ワ)1076号 判決 1973年3月26日

原告 神奈川県信用保証協会

右訴訟代理人弁護士 村田武

被告 高野寝具工業株式会社

右訴訟代理人弁護士 飯塚計吉

主文

横浜地方裁判所昭和四一年(ケ)第九四号不動産任意競売事件につき、同裁判所が作成した別紙第二配当表(更正配当表)のうち順位2の1から4までの部分を取消し別紙第一配当表のとおり変更し、これを実施する。

原告その余の請求は棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

(一)横浜地方裁判所昭和四一年(ケ)第九四号不動産任意競売事件につき同裁判所が作成した別紙第二配当表(更正配当表)のうち順位2の1から4までの部分を取消し、別紙第三配当表のとおり変更し、これを実施する。

(二)訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

(一)原告の請求を棄却する。

(二)訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、(請求原因)

(一)原告は訴外加藤嘉市所有の別紙物件目録記載の不動産(以下本件1ないし5物件と称する。)につき横浜地方裁判所に根抵当権(普通抵当権に転化、以下同じ。)の実行による競売の申立をなし、同裁判所は昭和四一年六月一日競売手続を開始し、右不動産を競売した結果、二番抵当権者である被告の債権を考慮し別紙第二配当表記載のごとき配当表を作成し、昭和四六年七月二日午前一〇時に配当期日を施行した。

(二)原告は後記のとおり第一順位の根抵当権によって担保されている求償債権元金九五二万四、四二二円及びこれに対する日歩四銭の割合による遅延損害金の最後の二カ年分合計金二七八万一、一三一円の債権を有しているので、本件配当において競売手続費用を控除した売得金残金五三二万九、〇八三円は、原告の右損害金全額と、元金のうち金二五四万七、九五二円に優先的に配当さるべきであるので、右配当期日において配当異議を申立てたが、完結しなかった。

(三)原告の債権取得の経緯は次のとおりである。

1.訴外横浜信用金庫(以下単に金庫という。)は昭和三八年七月一九日訴外株式会社加藤工務店(以下単に会社という。)に対し証書貸付、手形貸付、手形割引およびその他の継続的信用取引契約を結び、訴外加藤嘉市は、会社の右取引による現在および将来負担すべき一切の債務を担保するため、その所有にかかる本件1ないし4の土地につき、期日を定めず債権元本極度額金四〇〇万円、期限後の損害金日歩六銭の約定で第一順位の根抵当権を設定し、同月二四日その設定登記手続を了した。その後各当事者間において、同年一〇月二一日に債権元本極度額を金一、〇〇〇万円に増額するとともに、本件5の物件を追加担保とし、第一順位の根抵当権を設定し、いずれも同月二九日登記手続を了した。

ところで会社は金庫から

(1)昭和三八年七月一九日、金三五〇万円を、同年八月から昭和四〇年七月まで毎月一五日限り金一五万円宛(ただし最終回は金五万円)分割弁済し、利息は日歩二銭六厘とし、毎月一五日に一カ月分の前払いをなすこと、期限後の損害金は日歩六銭とすること、債務の履行を怠った場合、または手形不渡事故により取引停止処分を受けた場合は、期限の利益を失い、残額を一時に支払うこと等の約定で借り受け、

(2)同年一一月三〇日に金三五〇万円を弁済期昭和四〇年一一月三〇日、その余の条件は(1)同様として借り受け、

(3)昭和三九年七月六日、金三〇〇万円を、同年八月から昭和四一年七月まで毎月一〇日限り金一二万五、〇〇〇円宛割賦弁済、利息日歩二銭五厘、毎月一〇日限り一カ月分前払い、その余の条件前同様として借り受け、

(4)同年七月一〇日金三五〇万円を弁済期同年一〇月八日、利息日歩二銭五厘、弁済期までの利息前払い、その他の条件前同様として借り受け、

たので、金庫の会社に対する右貸付金はいずれも前示根抵当権によって担保されることとなった。

2.原告は会社の右債務につき(1)については加藤嘉市とともに、(2)、(3)、(4)については加藤嘉市及び訴外加藤実とともに連帯保証をしたところ、右会社は手形不渡事故を起し、昭和三九年七月一八日銀行取引停止処分を受け、前債務につき期限の利益を失い、原告は金庫より代位弁済請求を受け、同年九月九日金庫に対し、(1')、前示(1)の債務につき利息金一万一、〇五〇円及び残元金一七〇万円。(2')、(2)の債務につき利息金一万五、三一二円及び残元金一七五万円。(3')、(3)の債務につき利息金二万五、五〇〇円及び元金三〇〇万円全部。(4')、(4)の債務につき元金三五〇万円全部。

以上合計金一、〇〇〇万一、八六二円を弁済し、同月二一日普通抵当権化した前記根抵当権の代位弁済による移転登記を了した。

3.ところで、原告が右連帯保証をなすについては、主債務者会社、連帯保証人兼物上保証人加藤嘉市及び連帯保証人加藤実らとの間において信用保証委託契約を締結しており、その契約において、求償関係において原告には負担部分はないこと、会社、加藤嘉市、加藤実は原告の代位弁済金全額について相互に連帯して求償に応ずべきことを認め、且つ代位弁済金に対して、代位弁済の日の翌日から日歩六銭以内の割合による損害金を付して支払うことの特約がなされた。

4.前記代位弁済金についてはその後一部弁済があり前項(1')について元金残一六六万一九二〇円、損害金合計金一四万九、七八五円及び右元金に対する昭和四〇年四月二〇日以降日歩四銭の割合による損害金同(2')について元金残一六二万二、三七七円、損害金一五万一、〇四六円及び前同日以降同率の損害金、同(3')について元金残二八八万五、五〇〇円、損害金二六万四、七七三円及び前同日以降同率の損害金、同(4')について元金残金三三五万四、六二五円、損害金金三〇万二、四四七円及び前同日以降同率の損害金の範囲となったので、原告の求償権は元金合計金九五二万四、四二二円につき本件抵当権により担保されるとともに、約定の損害金日歩六銭以内で定めた日歩四銭の割合による右元金に対する最後の二年分の損害金合計金二七八万一、一三一円につき優先弁済を受けられる筈である。

(四)本件競売手続については、先ず、本件1の宅地につき競落が行われ、競落代金、利息手続費用合計金四八万九、七三一円であったところ、昭和四三年一月三〇日手続費用を控除した残額金四六万二、九〇四円を原告の損害金債権二七八万一、一三一円(右配当においては日歩四銭の損害金を認めたもの)への配当として全額これを計上配当した。ところが本件2ないし5の物件についてなされた昭和四六年六月一四日作成された本件配当表(仮差押債権者株式会社みなと石油商会が仮差押の取下げされたため同債権者関係が訂正された)の実施に際し、裁判所は、原告の本件抵当権によって担保される額は、前示2の(1')の求償債権について、連帯保証人兼物上保証人加藤嘉市と原告の二名の頭割り額(二分の一)である金八五万五、五二五円、同(2')ないし(4')の求償債権について右加藤嘉市及び連帯保証人加藤実及び原告の三名の頭割り額(三分の一)である金二七六万三、六〇四円合計三六一万九、一二九円であり、最後の二年分の損害金については、右元金に対する年六分の割合による金四三万四、二九五円であると断じ、別紙第二配当表を作成したものである。

(五)しかし、原告は、前記のとおり、会社の金庫に対する債務につき連帯保証をなすに際し、右会社及び連帯保証人兼物上保証人加藤嘉市、連帯保証人加藤実との間において、原告が代位弁済した場合に原告には負担部分がないこと、原告が取得する各被求償者に対する求償債権に対して右三名は連帯して支払義務を負う旨の特約を締結している。民法五〇一条に定める求償権の範囲は、互いに求償関係に立つ保証人又は物上保証人間の問題であり、右規定は特約を排除する強行規定とは解されず、特約あれば、これに拠るべきである。

また、損害金の率についても、原告と前示三名間には、これを日歩六銭以内とする約定があるので、これを日歩四銭と定めた。民法四六五条において準用する同法四四二条二項に定める法定利息の規定も、共同連帯保証人間の内部の求償債権の範囲に関するもので、これを強行規定と解すべき理由はなく、当事者間の特約を有効と解すべきである。そして本件においては、金庫の有する根抵当権設定登記について、すでに延滞損害金につき日歩六銭の登記を経ているので、原告の損害金については、右登記の範囲内で第三者に対抗し得るものと認めるべきである。

(六)よって原告は本件配当表を別紙第三配当表のとおり変更して実施すべきことを求め本訴に及ぶものである。

二、(答弁)

(一)請求原因(一)、(二)の主張事実中競売手続に関する部分は認め、その余は争う。

(二)同(三)の主張事実中主張の登記のある点は認め、その余は不知。

(三)同(四)の主張事実は認める。

(四)同(五)の主張事実は不知、その余の主張は争う。

第三、立証<省略>

理由

一、原告主張の任意競売申立事件において、その手続が請求原因(一)主張のとおり進行し、別紙第二配当表記載のとおりの配当表が作成され、同(二)主張のとおり原告が配当異議の申立をなしたが、完結しなかったこと、裁判所が右配当表を作成した根拠が同(四)主張のとおりであること、以上は当事者間に争いのないところである。

二、よって、原告の債権について判断する。

(一)<証拠>に照せば、訴外株式会社加藤工務店(以下単に会社という。)は、訴外横浜信用金庫(以下単に金庫という。)との間に証書貸付、手形貸付、手形割引およびその他の継続的信用取引契約を締結し、原告主張(請求原因(三)1)のとおりの条件で主張の金員を借り受けたこと及び、会社代表取締役加藤嘉市は、個人所有の本件1ないし5の物件につき、右取引により会社の負担する一切の債務を担保するため、債権極度額金一、〇〇〇万円、延滞損害金日歩六銭とする第一順位の根抵当権を設定したこと、加藤嘉市は別途右債務全部につき連帯保証人となり、会社取締役加藤実は右債務中昭和三八年一一月三〇日以降の借受分(請求原因(三)、1、(2)、(3)、(4))につき連帯保証をなしたことを認めることができる。

(二)<証拠>によれば、原告は会社、加藤嘉市、加藤実の依頼を受けて、会社の右取引につき、いずれも金庫に対し連帯保証を約したことを認めることができ、

<証拠>によれば、原告は昭和三九年九月九日、会社の金庫に対する債務について連帯保証人として、請求原因(三)、2、主張のとおり弁済し、その合計は金一、〇〇〇万一、八六二円とおり、同月二一日確定債権一、〇〇〇万一、八六二円の代位弁済を原因として本件金庫の根抵当権の移転を受け、付記登記による移転登記を得たことを認めることができる。

三、そこで、物上保証人たる加藤嘉市に対する原告の求償権の範囲について検討する。

原告が代位弁済をなした債権及び額は、会社が昭和三八年七月一九日借入分について、元本並びに損害金を含め金一七一万一、〇五〇円、昭和三八年一一月三〇日借受分につき同様金一七六万五、三一二円、昭和三九年七月六日借受分について同様金三〇二万五、五〇〇円、同年同月一〇日借受分について同様金三五〇万円(以下順次(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の求償債権と略称する。)、であることは上段判示のとおりであり、原告が代位弁済後、各求償債権につき一部弁済をうけ、(イ)の求償債権について元本残金一六六万一、九二〇円、(ロ)の求償債権について元本残金一六二万二、三七七円、(ハ)の求償債権について元本残金二八八万五、五〇〇円、(ニ)の求償債権について元本残金三三五万四、六二五円と減じたことは原告の自陳するところである。しかして前掲<証拠>によれば会社、加藤嘉市、加藤実はいずれも原告に対し、原告が代位弁済した日の翌日以降代位弁済金額に対し、日歩四銭の遅延損害金の支払を約していることを認めることができ、右会社等はその損害金の支払をしていないことを認めることができる。よって主たる債務者たる会社は原告に対し、残元本合計金九五二万四、四二二円並びに民法四四二条二項の規定にかかわらず、右金員に対する約定の日歩四銭の割合による損害金の支払義務があるものと解すべきである。

ところで、本件代位弁済の対象債務について(イ)の求償債権関係においては保証人として原告のほかは、物上保証人兼連帯保証人たる加藤嘉市一名があり、(ロ)ないし(ニ)の求償関係においては、更に連帯保証人加藤実が存在することは上段認定のとおりであるから、特段の事由のない限り、物上保証人に対する原告の求償し得る範囲は、民法五〇一条五号、四六五条、四四二条に従い、各人の負担部分を平等として(イ)の求償債権につき二分の一、(ロ)ないし(ニ)の求償債権につき三分の一となるべきである。

ところで前掲甲第八号証の一ないし四によれば、原告は本件信用保証委託に際し、右保証委託者等との間において、

「被保証人(会社)の保証人(加藤嘉市、加藤実以下同じ)は、原告が被保証人に対して将来取得することのある求償権について被保証人と連帯し、且つ保証人相互の間に連帯して弁済の責に任ずる」旨、「保証人及び物上保証人は保証債務を弁済した場合に原告に対し求償権を行使し得ない」旨の約定をしていることを認めることができる。そうすると、前者は、保証人ら(加藤嘉市、加藤実)は、求償債務のあること、即ち原告との間において負担部分のあることを前提とした条項であり、後者は原告において負担部分のないことを前提とした条項と解することができ、些か措辞に正確性を欠く嫌いはあるけれども、右条項は連帯保証人間では原告の負担部分は無いものとする約定であると認めるのが相当である。そして共同保証人間の右約定は民法五〇一条五号により制限せられるべきものとは解されないから、(イ)の求償債権については、負担部分につき物上保証人兼連帯保証人加藤嘉市が全部、(ロ)ないし(ニ)の求償債権については右同人並びに連帯保証人加藤実両名において全部の支払義務を負い、原告は(イ)の求償債権については、連帯保証人兼物上保証人たる加藤嘉市に対し全額、(ロ)ないし(ニ)の求償債権については両名から合計して全額求償し得るものといわなければならない。

第一配当表

競売売得金

債権の種別

債権額

交付額

順位

債権者

5,404,000円

競売費用

90,243円

90,243円

1

原告

利息14,796

求償利息

(462,904)

239,870

(462,904)

239,870

2-1

原告

手続費用530

求償元金

5,856,456

5,179,456

2-2

原告

計5,419,326

損害金

154,957

3-1

被告

備考 ( )内は第一回配当において交付済の金額を表示。

第二配当表

競売売得金

債権の種別

債権額

交付額

順位

債権者

5,404,000円

競売費用

90,243円

90,243円

1

原告

利息14,796

求償利息

(434,295)

(434,295)

2-1

手続費用530

求償元金

(28,609)

3,590,520

(28,609)

3,590,520

2-2

計5,419,326

損害金

154,957

154,957

3-1

被告

元金

530,676

530,676

3-2

求償利息

9,008,433

1,038,693

4-1

原告

求償元金

5,905,293

4-2

損害金

204,417

14,237

4

被告

備考 ( )内は第一回配当(先に競落された本件1の物件の配当)において交付済みの金額を示す。

第三配当表

競売売得金

債権の種別

債権額

交付額

順位

債権者

5,404,000円

競売費用

90,243円

90,243円

1

神奈川県

信用保証協会

利息14,796

損害金

(462,904)

2,781,131

(462,904)

2,781,131

2-1

手続費用530

求償元金

9,524,422

2,547,952

2-2

計5,419,326

備考 ( )内は第一回配当において交付済みの金額を表示。

ところで、原告は、(ロ)ないし(ニ)の求償債権について、求償債務者らは、特約により連帯してその責に任ずるので、加藤嘉市は物上保証人として、右物件により全額につき求償されるべきであると主張するので判断を進めるに、上段認定のとおり、加藤嘉市、加藤実は原告に信用委託依頼をなすに際し、信用委託約定書第六項において原告が代位弁済をなした場合、両名は保証人として、原告が被保証人である会社(主たる債務者)に対して、将来取得することのある求償権について、被保証人と連帯し、且つ保証人相互間に連帯して弁済の責に任ずる旨約していることを認めることができる。しかして右約定の後段は、原告と、加藤嘉市、加藤実間の約定であることを考えれば、加藤らが、前段において、会社の求償債務について連帯して弁済の責に任ずるとともに、更に加藤ら各自の求償債務について連帯してその責に任ずる旨を約したものと解するのが相当である。しかし、右約定は、加藤らが、金庫に対する連帯保証人として負う責任から生ずる求償債務につき、別途、これを更に連帯してその責任を負う旨を定めたものと解され、本来の求償債務についての負担部分を定めたものとは到底解し難いところである。そして、本来の負担部分を定めたと認めるべき他に資料はない。よって右両名間の負担部分は平等の割合である二分の一宛と解するほかはなく、右条項は結局、加藤両名は、負担部分により生ずる各二分の一の本来の求償債務と、それぞれ、相手方の各二分の一の求償債務について特約により債務引受による連帯債務とされた部分双方について支払義務を負うこととなることを意味しているものと解するほかはない。そうとすれば、物上保証人としての加藤嘉市は民法第五〇一条第五号の趣旨に従い、その提供物件によっては、本来の負担部分である二分の一の範囲内において弁済の責任を負うべきであり、特約により連帯債務となったその余の二分の一の部分については、同人に支払義務があっても、右条項に従った被求償責任には含まれないものと解すべきである。

そうとすれば、原告が本件物件から求償を求め得る(ロ)ないし(ニ)の債権の範囲は、求償し得る債権額の二分の一であると断ずべきである。

四、次に損害金の点について判断する。

物上保証人兼連帯保証人加藤嘉市、連帯保証人加藤実が、原告の代位弁済金につき、弁済の翌日以降日歩四銭の割合による遅延損害金を支払う旨約定していることは上段認定のとおりである。そうとすれば、加藤嘉市等は原告に対する求償債務金については、民法四四二条二項の規定にかかわらず、右約定損害金を支払うべき義務があるというべきである。

(民法四四二条二項に定める法定利息は、求償債権について、なんら利息又は損害金の定めのない場合の補充規定と解すべきである。)また、本件根抵当権設定登記に被担保債権における損害金として日歩六銭の割合とする旨の登記があることは上段認定のとおり原告主張のとおりである。しかし、利息、損害金等についての対抗力は、本件の場合においても、民法三七四条の規定が適用され、元本債権に関する登記の記載から利息の生ずべきこと、その利率の明白な場合を除いては、その旨の登記を要すると解すべきところ、原告主張の損害金はその利率が被担保債権における損害金率の範囲内であるにしても、その実体は異なり、登記記載の損害金の表示をもって、求償債権についての損害金の表示と解することは困難であり、結局、原告主張の損害金は、その登記簿上に記載はなく、利害関係に立つ第三者に対抗できないものと解すべきである。(ただし、法定利息の限度においては前述のとおり優先弁済を認めるべきである。)

五、以上判示してきたとおりであるから、原告は本件競売事件配当においては(イ)の債権については全額金一七一万一、〇五〇円、(ロ)ないし(ニ)の債権についてはその二分の一金四一四万五、四〇六円並びにこれらに対する商法所定の年六分の割合による最後の二年分の損害金金七〇万二、七七四円につき順位第一番の抵当権者として配当を受け得べきものであり、右限度を超えた部分については、利害関係人たる被告らに対抗できないものというべきである。

よって、本件配当表は右趣旨に沿う部分につき別紙第一配当表のとおり訂正し、その配当を実施すべきものとし、その余の請求は理由がないのでこれを棄却するものとし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条、第九二条、但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小河八十次)

<以下省略>

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